2011年02月20日

フォレストガンプは「アメリカ」

ずいぶん昔(1995年だそうで)の映画。

Yahoo!映画の評やall cinema online の映画評があまりにも浅薄なので、ここに「解説」を書こうと思います。

明るいアメリカの歴史の象徴「フォレスト・ガンプ」、暗いアメリカの歴史の象徴「ジェニー」の二人が織りなす物語。

知的障害に身体障害である「うすのろフォレスト(「ガンプ」とは「うすのろ」という意味。)」が最初と最後に出てくる鳥の羽のように「風に任せて」いたら本人の意思とは関係なく輝かしい成功をしてしまう。「成功」「勝利」が至上主義の「アメリカ」を皮肉っている。これは、現代アメリカを振り返ってみようという映画である。


話は「古き良きアメリカ」の60年代からはじまる。オールディーズのロックンロールの時代。

おじいさんのおじいさんのおじいさんの代からからアラバマ州に住んでいる生粋の「南部人」。つまり保守的で白人至上主義の地域。事実、母はKKKという白人至上主義団体の創立者「ネイサン・ベッドフォード・フォレスト」から息子の名前を付けている。この一事を持ってしても、この映画はただ者じゃないと覚悟をして見なければならない。

フォレストが足の装着具のせいで膝を曲げたままの姿勢のダンスをしていたことが、無名時代に自宅に宿泊したエルビスプレスリーの有名なダンスポーズの元になっているとしているところからフォレストの「成功物語」が始まる。

一方幼なじみジェニーは父親からの性的虐待の被害者。父親はすぐに逮捕されてしまう。最初から「暗部のアメリカ」なのである。

やがて足の装着具を外せるようになり、俊足になったフォレストはその足を活かしてフットボールの選手として知的障害を持ちながら大学進学という成功を果たす。

公民権運動の高まりの中、フォレストの南部の大学でもついに黒人の入学が決定。アラバマ州知事のジョージ・ウォレス知事は抗議の声明を発表(黒人を入学させることに!)。その場面の後ろでなぜかフォレストが写る。ちなみにフォレスト自身が人種差別的な思考はないことは入学する黒人が落とし物をしたときに拾ってあげていることで説明が付く。

大学でもフットボール選手として活躍、ケネディ大統領との対面も果たす。

ベトナム戦争が始まり「古き良きアメリカ」は終わりを告げる。フォレストは大学を卒業して軍隊に入る。そこで知り合うのは黒人のババ。ママも、ママのママも、ママのママのママもエビ料理をしてきた(黒人なので白人に仕えてきた)。ババはエビの漁師。エビのことなら何でも知っている(会話はすべて「エビ」。エビのことしか考えてないし、黒人であるババにはそれしか成功の道はない)。フォレストは軍隊の生活にも馴染んで認められる。

幼なじみのジェニーが歌手デビューしたと聞いて行ったのはストリップ劇場。彼女は裸をギターで隠しながら、場違いにフォークソングを歌って、観客にやじられる。歌っている曲は公民権運動を進める人々の間でテーマソングともいえるボブ・ディランの「風に吹かれて(この映画の隠れたテーマソング)」

やがてフォレストはベトナムへと派兵される。現地での小隊長はダンという人物。彼は南北戦争の時代から「名誉の戦死」を遂げてきた家系(とフォレストが言っている)。彼も「アメリカ」の一人。

敵の襲撃を受けたとき、ただ親友のババを救うために動いた結果、仲間を何人も救うことになりそのことで国家から表彰される。ダンは「名誉の戦死」を願っていたが、フォレストに助けられる。しかし両足を切断し「障害者」になってしまう。ジョンソン大統領から栄誉勲章を受ける。

帰り道、ベトナム反戦運動の集会でなぜかスピーチをすることになったがスピーカーが異常をきたしスピーチの内容はわからない。そばで聞いていたスタッフが涙する。おそらくアメリカにとって本当に大切なことをフォレストが語ったのであろう。

そこでヒッピーとなったジェニーに再会。ジェニーは反戦運動委員会の委員長と恋人同士になっている。しかし彼女に対する暴力をみて助けようとする。集会も運動も「理屈」ばかりが先走って本当に人間を大切にしていたのかという監督の意図が読み取れる。

1969年。アポロ11号が月面着陸に成功した頃、アメリカ−中国はピンポン外交により関係を深めて1972年の米中国交樹立へと向かう。この時もフォレストはピンポンでずば抜けた才能を発揮して名誉を高める。

ニクソン大統領にも対面して栄誉表彰を受ける。しかし、かの有名な「ウォーターゲート事件」発覚のきっかけをフォレストが作って、ニクソン大統領は辞任。このことからもフォレストが「成功のアメリカ」の象徴であっても「体制側」ではないとわかる。

ダン小隊長は障害者ゆえに浮浪者同然の生活になっている。これも弱肉強食のアメリカらしい。ダダとエビ漁の船を持つ夢を語ると、ダンから「おまえが船長になったら俺は宇宙飛行士になる」と言われる。

一方ジェニーはヒッピーの象徴であるドラッグで体も心もぼろぼろになって自殺をも考えるようになる。当時ヒッピーが自殺をしたり、ドラッグで中毒死するのはよくあることだった。

フォレストとダンの始めたエビ漁業が大当たりして、またしてもフォレストは成功する。そしてダンが創業当初のアップルコンピュータ(創業は1976年。創始者二人はヒッピー)に投資してくれたおかげでその後もフォレストは何不自由ない生活を送れるぐらいの大金持ちになる。

母がガンで亡くなった後にふらりとジェニーが現れ、一夜を共にした後、また去ってしまう。

落胆したフォレストは急に走りたくなり、アメリカを東西に何往復も走り始める。すると彼を「平和の使者」として慕った「信者」がぞろぞろと後を追って走るようになる。彼らの中から有名なステッカーやニコちゃんマークのTシャツの発案者が現れるがみんなフォレストの言葉や行為からだった。

3年間走り続け急に走るのを止めたフォレストにジェニーから連絡が入る。彼女には子供がいて、それは彼の子供だった。

そしてジェニーと結婚する。結婚式で現れたダンは宇宙船を造るチタン製の義足で歩けるようになり、アジアン系の女性と婚約。

しかし、ジェニーは病気で死ぬ。母を看取った同じベッドで。ロナルド・レーガン大統領時代なので、その頃の病としてはエイズなのだろう。

フォレストはジェニーの墓前でつぶやく。

「ジェニー。僕には分からない。正しいのはママなのか、ダン小隊長だったのか、僕らには皆運命があるのか それとも風に乗って、ただ さまよっているのか たぶん、その両方だろう 両方が同時に起こってる」

というセリフ。

ママのアメリカ、ダン小隊長のアメリカ、ジェニーのアメリカ、フォレストのアメリカ。どのアメリカが正しいのかはわからない。「その答えは、風に吹かれている」(「風に吹かれて」の歌詞の一部)すべてが同時に起こっているんだ。
posted by n_shimizu at 23:17| Comment(8) | TrackBack(0) | 日記